木と草の王墓は、どうして100年以上残ったのか。|ウガンダ・カスビ王墓

ウガンダの首都カンパラに、広い王墓があります。

門をくぐると大きな中庭。その向こうに、いくつもの建物が並んでいます。

さらに奥に見えるのが、大きな茅葺き屋根。

カスビ王墓の敷地は26.8ヘクタール。サッカーコートなら、およそ38面分です。

王墓のほかにも、門や中庭、儀礼に使う建物、農地まであります。

「王のお墓」と聞いて思い浮かべるより、ずっと大きい。

昔の王宮を中心にした場所が、今も続いているようです。

2007年に撮影されたカスビ王墓ムジブと周囲の景観
2007年のカスビ王墓。大きな茅葺き屋根と周囲の景観。Photo: not not phil / Wikimedia Commons / CC BY-SA 2.0 Photo:
目次

王が暮らした宮殿が、王墓になった

その中心にある大きな茅葺き建築が、ムジブ・アザーラ・ムパンガ(Muzibu Azaala Mpanga)。

ここからはムジブと呼びます。

直径は約31メートル。内部の高さは約7.5メートル。木や葦、樹皮布、草などを使った大きな円形の建物です。

名前も少し気になります。カスビ王墓の公式サイトでは、「強い者が、力ある者を生む」といった意味で説明されています。王から次の王へ。そんな意味合いを持つ名前です。

ムジブが建てられたのは1882年。

最初は、ブガンダ王ムテサ1世の宮殿でした。

その2年後、ムテサ1世が亡くなると、王が暮らしていた宮殿が王墓になります。

現在ここに葬られている王は4人。もともとブガンダでは王ごとに別の墓所を設けていましたが、後の王たちもカスビに葬られるようになりました。

王が暮らした宮殿が、歴代王の眠る場所になっていったのです。

2009年に撮影された火災前のカスビ王墓ムジブ
2009年撮影のムジブ。翌2010年の火災前の姿。Photo: Karl.Mustermann / Wikimedia Commons / Public Domain Photo:

100年以上、直しながら

1882年築。

そう聞いて、いちばん気になったのは茅葺き屋根でした。

これ、100年以上ももつの?

茅は何度も葺き替えられ、木も修理されてきました。ムジブそのものも、長い時間のなかで手を入れながら使われています。

140年前の材料をそのまま守ってきたというより、建物を140年以上つないできた。

茅は傷み、木も傷む。だから手を入れる。必要なら材料も替える。

ムジブは、そうやって続いてきました。

カスビ王墓で使われる茅と植物材料の結束部分
カスビ王墓の植物材料と茅葺きのディテール。Photo: not not phil / Wikimedia Commons / CC BY-SA 2.0 Photo:

屋根の内側には、植物でつくられた輪が何重にも重なっています。

数は52。ブガンダの52の氏族と結びついた数だとされています。

屋根のつくりの中に、王国の人々のつながりまで重ねられている。

カスビ王墓では今も儀礼が行われています。人が訪れ、建物を守り、傷んだところに手を入れる。

建物と一緒に、使い方や直し方も続いてきました。

2009年に撮影された火災前のムジブ内部の茅葺き構造
火災前のムジブ内部。Photo: Andrew Moore / Wikimedia Commons / CC BY-SA 2.0 Photo:
現在のカスビ王墓内部を訪れる人々
現在も人が関わるカスビ王墓。Photo: Samson Ssemakadde / Wikimedia Commons / CC0 Photo:

2010年3月16日

ムジブが燃えました。

大きな茅葺き屋根は火に包まれ、建物の大部分が失われます。

100年以上、直しながらつないできた建物でした。

火災後の写真を見ると、ここで歴史が途切れたように見えます。

それでも、つくり方は残っていました。

【画像07|2010年火災・被災後のムジブ】未取得。推奨ファイル名:

もう一度つくる

再建には写真や図面に加えて、昔から建物をつくり、直してきた人たちの技術が使われました。

材料の扱い方、茅葺き、建物に結びついた知識。経験のある人から若い世代へ、再建の現場で技術が渡されていきます。

使われたのは、火災前から続いていた技術です。

カスビ王墓では、もともと傷んだ建物を直しながら使ってきました。その積み重ねが、建物全体をつくり直す場面にもつながりました。

【画像08|ムジブの再建作業・技能継承】未取得。推奨ファイル名:

2023年、ムジブの再建が完了しました。

再建後のカスビ王墓ムジブ内部と植物材料を組んだ屋根
再建後のムジブ内部。Photo: Z thomas / Wikimedia Commons / CC BY 4.0 Photo:

最初にこの建物を見たときは、「木と草でできているのに、100年以上も残るんだ」と思いました。

茅も木も、長い間に何度も替わっています。

茅を替える。木を直す。必要なところに手を入れる。

そうやって建物をつないできた。そして大きく失われたあとも、もう一度つくることができました。

直せることも、建物の寿命の一部なのかもしれません。

今のカスビには、また大きな茅葺き屋根が立っています。

140年という時間の中で、材料は替わり、建物は直されてきました。

そう思ってもう一度ムジブを見ると、最初とは少し違って見えます。

再建後のカスビ王墓ムジブ・アザーラ・ムパンガの大きな茅葺き屋根
再建後のムジブ・アザーラ・ムパンガ。Photo: Z thomas / Wikimedia Commons / CC BY 4.0 Photo:

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