LOGHOUSE LIBRARY
雪の森に建つハンドカットログハウス
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LOGHOUSE LIBRARY / BOOK 02

ハンドカットログハウスとは

あの太い丸太の家は、どうやってつくられているのだろう。

「ログハウス」と聞いて、最初に思い浮かぶのはどんな建物だろう。

太い丸太を幾重にも積み上げた、森の中の山小屋。北欧やカナダの観光地に建つホテル、夏休みに訪れた別荘やロッジを思い浮かべる人もいるかもしれない。

『北の国から』に登場する丸太小屋、『アルプスの少女ハイジ』のおんじの山小屋、『魔女の宅急便』で絵描きのウルスラが暮らす森の小屋。物語の中で見た木の家が、ログハウスのイメージになっている人もいるだろう。

太い丸太が横に積み重なり、壁の四隅で交差して外へ突き出している。そんな丸太組の建物が、ログハウスの代表的な姿ではないだろうか。

ログハウスにはさまざまな種類がある。その中でも、丸太の自然な形を活かしてつくられるのが「ハンドカットログハウス」だ。


CRAFT

丸太を積むということ

ハンドカットログハウスは、皮をむいた丸太を一本ずつ加工し、組み合わせて壁をつくっていく。

木の幹は根元が太く、先端に向かうほど細くなっている。太い方を「元口(もとくち)」、細い方を「末口(すえくち)」と呼ぶが、すべて同じ向きに積んでしまうと、壁の片側に太い部分が集まってしまう。そこで、元口と末口を互い違いに配置し、高さのバランスを取っていく。

しかし、丸太にはそれぞれ曲がりや凹凸がある。そのまま重ねても、上下の丸太はぴったり合わない。

そこで職人が使うのが「スクライバー」という道具だ。

大きなコンパスのような形をしていて、下の丸太の曲線を、上に重ねる丸太へ写し取ることができる。これをスクライビングと呼ぶ。

FIELD NOTES / 01

スクライバーの使い方

01 — 04
木の作業台に置かれた金属製スクライバーのイメージ写真(AI生成)
01道具の形形を写すための道具。 AI生成イメージ
AI生成イメージ。職人がスクライバーを使い、下の丸太の形を上の丸太に写し取る場面
02丸太の形を写す下を針でなぞり、上に線を写す。 AI生成イメージ
AI生成イメージ。安全装備を着けた職人がチェーンソーで丸太を加工する場面
03線に沿って削る上の丸太を外し、下面に溝をつくる。 AI生成イメージ
ハンドカットで組んだ丸太壁の接合部。完成後の納まりを示す実写写真
04もう一度、重ねる戻して、納まりを確かめる。 Photo: Robert W. Chambers / CC BY-SA 3.0

特に手がかかるのは、壁の四隅で丸太が交差する部分だ。

ここには「ノッチ」と呼ばれる切り欠きを設け、丸太同士をかみ合わせる。上下の接合面には「グルーブ」という溝を加工する方法もあり、どちらも組み方によってさまざまな形がある。

外から見ると豪快な丸太の壁だが、接合部分には細かな加工が施されている。

ちなみに、ハンドカットといっても斧やノコギリだけで建てるわけではない。チェーンソーはもちろん、クレーンなどの機械も使う。大きな丸太を扱う仕事だけに、加工場の光景はなかなか迫力がある。


BUILD

一度組んだ家を、もう一度組む

ハンドカットでは、実際に丸太を積みながら加工を進めるため、作業が進むにつれて壁も出来上がっていく。

昔は、建築する場所に丸太を運び、その場で削って積み上げる方法も広く行われていた。今でもDIYで小屋を建てる場合や、加工できる場所が確保されている場合には、現地で製作することがある。

一方、現在の専門業者による施工では、建築現場とは別の加工場でログ壁をつくる方法が広く採られている。

住宅地で大量の丸太を置き、チェーンソーを使いながら加工するのは簡単ではない。専用の加工場なら重機も使いやすく、建築現場ではその間に基礎工事などを進められる。

加工が終わるころには、加工場にログハウスの壁が組み上がっている。それを一本ずつ番号を付けて解体し、トラックなどで建築現場へ運ぶのだ。

現場では番号を確認しながら、再び丸太を積み上げていく。

同じくらいの太さだからといって、別の丸太と交換することはできない。一本ずつ相手の形に合わせて加工されているので、どの丸太にも決まった場所がある。

こうして加工場でつくられたログ壁が、今度は人が暮らす場所に建ち上がる。

PLATE 02CONSTRUCTION
スイスの谷あいで丸太を積み上げているログハウスの工事中の様子
丸太を積み上げている途中のログハウス。Photo: David Croll / Public domain

HISTORY

昔からある、丸太の家

丸太を横に積み重ね、角を組み合わせて壁をつくる。この建て方は、何百年も前から世界のさまざまな地域で使われてきた。

ノルウェーの民俗博物館には、1240年ごろに建てられた「ソーレ・ラウランの家」が保存されている。丸太を積んだ壁には複雑な切り欠きが施され、当時の職人がどのように木を組み合わせていたのか、今も実物を見ることができる。

現在のハンドカットログハウスとは道具も施工方法も異なるが、丸太を組んで壁にするという考え方は共通している。

かつて、森林の豊かな地域では、身近にある木材で住まいをつくるための方法の一つだった。家族が暮らす家もあれば、家畜を飼う小屋や食料を保管する倉庫もあった。

時代が進み、建築技術や建材の種類は大きく変わった。今では、丸太を一本ずつ加工しなくても、快適な家を建てられる。

それでも、太い丸太を積み上げた家は、昔の建物だけになったわけではない。現代でも、時間と手間をかけてハンドカットログハウスを建てる人たちがいる。

PLATE 03LOG HOME / WINTER
雪の森に建つ、太い丸太を積んだ住宅と大きな窓
雪の森に建つ丸太組の家。建築の参考写真。Photo: Ahmet Yüksek / Unsplash License
LIVING

この家を選ぶ人たち

ハンドカットログハウスを建てるのは、森の中に別荘が欲しい人ばかりではない。

毎日暮らす自宅として選ぶ人もいれば、趣味のための小屋や、レストランを建てる人もいる。宮城県には、大好きなジャズを大きな音で楽しみ、ライブも開けるレストランをハンドカットで建てた人がいる。

家を建てようと思ったとき、間取りや設備より先に、あの丸太の家に住みたいという憧れがあった人もいるだろう。

室内に入れば、外から見えていた太い丸太がそのまま壁になっている。一本ずつ違う木目や節、ところどころに現れる木の割れ。壁の角では、大きな丸太同士が組み合わさっている。

そんな空間が好きで、ハンドカットを選ぶ。

PLATE 04INTERIOR
フィンランド・ルカのログハウス室内。自然な丸太の壁と白い暖炉、窓、家具が見える
フィンランド・ルカのログハウス。太い丸太がそのまま室内の壁になる。Photo: Timo Newton-Syms / CC BY-SA 2.0

もちろん、暮らしてみれば不便もある。丸い壁には家具をぴったり寄せにくいし、外壁の塗装や傷んだ部分の補修も必要になる。大きな丸太を使うだけに、建てるときの費用も安くはない。

それでも、手入れをしながら何十年も暮らしている人がいる。

ある住人は、もともと木の節や割れがある家なので、子どもが壁に傷をつけても、それほど気にならないという。人をたくさん招くより、ひとりで家を楽しむのが好きなのだそうだ。

ログハウスといえば、薪ストーブを囲んで大勢で過ごす光景を思い浮かべがちだが、実際の暮らしはもっと自由なのだろう。

その人は、ハンドカットログハウスに20年近く暮らしている。

旅行から帰って玄関を開けると、今でも木の香りがするのだという。