
ポーランド南部、タトラ山脈のふもとにあるホホウフ村(Chochołów)。
通りに沿って、三角屋根のログハウスがずらりと並んでいる。壁はログ材を水平に積んだつくりで、19世紀から残る家も多いそうです。
写真を見てまず不思議に思ったのは、外壁のログ材がずいぶんきれいなこと。どれが古い家なのかわからないくらい、明るい木肌をしている。
古い木造住宅といえば、木が黒ずんでいたり、塗装を重ねて色が濃くなっていたり、塗りつぶしの塗装がされていることも多い。
でも、この村の家は木の色がよく見える。
調べてみると、ホホウフには昔から家の外壁を石けんで洗う習慣があるそうだ。
春になると、家を洗う

使うのは水と石けん、そしてブラシ。春になると住民が家の外壁を洗い、汚れを落とす。
昔は女性たちが中心になって洗い、男性たちが足場を組んだり、水を運んだりしていたという。今では専門の業者に頼む家もあるそうです。
木の壁を水で洗うので、余計な水分が残らないように拭き取りもしっかりと。大きな家では数日かかることもあるというから、なかなか大変な作業だ。
日本でもログハウスの外壁を洗うことはあるけれど、毎年自分で洗う人はそこまで多くないと思う。村の習慣として続いているのは面白いですね。
ただ、少し気になることもある。
これだけきれいになるのは、石けんの効果だけでなく、ブラシで表面を研磨している部分もあるんじゃないだろうか。
毎年繰り返していたら、木材の表面が少しずつ薄くなっていく可能性もありそう。実際にどれくらい削れるのかはわからないけれど、ちょっと気になるところ。
ちなみに、石けんで洗えばどんなログハウスでもきれいになるという話ではないので注意。
塗装の種類や木の状態によって手入れの方法は違うので、そのまま真似するのはおすすめしません。
丸太を半分にして積む

建物のつくりも見てみよう。
ホホウフの伝統住宅には、丸太を縦に割ったような幅の広い木材が使われている。現地では「プワジ(płazy)」と呼ばれる。
この木材を水平に積み、建物の隅で組み合わせて壁をつくる。材と材の隙間には木の繊維などを詰め、風が入りにくいようにしていた。
屋根は薄い木の板を重ねたシングル葺き。妻側の上部が少し斜めに切り落とされたような「半切妻屋根」という形で、屋根の形もかわいいですね。
同じようなログハウスが並んでいるけれど、よく見ると窓の配置や軒先の飾りが違う。
家ごとの個性もちゃんとあります。
1本の木からつくった壁

この村には「Chałupa z jednej jedli(ハウパ・ズ・イェドネイ・イェドリ)」と呼ばれる住宅がある。
村の24番の家で、日本語にすると「1本のモミの木の家」。
1本の木で建てた? 材料足りる?
と思ったけれど、どうやらそういう意味ではないらしい。
この家の正面の壁に使われたログ材は、1本の大きなモミの木から取られたと伝えられている。木は近くのオストリシュという丘で伐採されたという。
家全体ではなく、正面の壁の話だった。
ただ、実際に1本の木から取られたことを証明する資料は確認できなかった。現地の文化財案内でも伝承として紹介されている。
それでも、壁一面に使う木材を1本から取れたというのだから、相当な大木だったはず。
どれくらいの太さがあったんでしょうか。
今も人が暮らす村

ホホウフは、古い住宅を移築して並べた展示施設ではなく、今も人が暮らしている村です。
75番の住宅は博物館として公開されている。1798年に建てられ、1889年に改築された建物で、昔の暮らしを知ることができる。

室内には「黒い部屋」と「白い部屋」がある。
黒い部屋は炊事や暖房など、普段の生活に使う場所。白い部屋は装飾品などを飾り、来客や特別な機会に使われていたという。
同じ家の中でも、部屋によってずいぶん使い方が違ったようだ。
一方で、古いログハウスに住み続けるのは簡単なことばかりではない。
ホホウフの住宅や街並みは文化財として保護されていて、屋根の修理や改築にも制約がある。ワルシャワ大学の調査では、保存のための決まりや暮らしの不便さについて、住民の声も紹介されていた。
外から眺めるだけなら美しい木造の街並み。でも、ここで暮らす人にとっては毎日の生活の場所です。
今も春になると石けんとブラシで家を洗い、傷んだところを直しながら住み続けている。
古いログハウスが今でもこんなにきれいなのは、そういう手入れを重ねてきたからなんですね。
