
イエローストーン国立公園に、1904年開業の木造ホテルがある。オールド・フェイスフル・イン。設計はロバート・C・リーマー。100年以上前の建物だが、今もホテルとして営業していて、実際に泊まることができるログ建築です。
オールド・フェイスフルという名前

Old Faithfulは、ホテルのすぐそばにある間欠泉の名前です。
この名が付いたのは1870年。イエローストーンが国立公園になったのは1872年で、ホテルの開業はそれから30年以上あとになる。
現在も噴出は続いていて、水柱の高さはおよそ30〜55m。National Park Serviceでは、次の噴出時刻まで予測して公開している。
つまり、先に有名だったのはホテルではなく間欠泉の方だった。その景色を見に人が訪れ、すぐそばに宿が建つ。今もホテルから歩いて見に行けます。
世界最大級と呼ばれる規模
National Park Serviceは、オールド・フェイスフル・インを「世界最大のログ構造物とされる」建物として紹介しています。
現在の建物は全長約213m。客室は327室。
面積については、188,445平方フィートとする資料もある。約17,500㎡。坪にすると、約5,300坪。
この面積はNPSの公式資料では確認できなかったため、参考値として見ておきたい。それでも約5,300坪。世界最大級というのも納得の数字です。
ただ、この5,300坪すべてが丸太組というわけではなく、オールド・フェイスフル・インは、ログ壁と木造フレームを組み合わせた、複合的な木造建築です。
旧館の1階は11段のログ壁

1903〜1904年に建てられた最初の旧館では、1階に荷重を受けるログ壁がつくられた。
丸太は11段。一本ずつ形を合わせるように加工し、角ではサドルノッチで組んでいる。使われた材は、イエローストーン周辺で採れたロッジポールパイン。
そして、この初期部分だけで使われた丸太は1万本を超えるとされている。
全部が丸太組ではない。それでも、最初につくられた下層だけで1万本。一本ずつ形を合わせながら刻んで組んだと思うと、いったいどれくらいの手間がかかったのだろう。
そのログの上に木造フレームが重なり、さらに後年の増築が加わって、現在のホテルになった。
「巨大なログハウス」というより、ログと木造フレームを組み合わせながら、この規模まで広がった建物と考えた方が近い。それでも、世界最大級のログ建築と呼ばれることに違和感はない。
世界には、これより大きなログ建築がまだあるのか。これは今後も調べてみたい。
この建物に使われている木の中には、曲がった枝や瘤のある材もあり、手すりや支柱として見えるところにそのまま使われている。普通なら扱いにくそうな木の形が、むしろ見どころになっています。基礎や大暖炉には、この地域で採れる流紋岩も使われた。
高さ20mのロビー

外観も大きいが、建物の規模を一番感じるのはロビーかもしれない。中央の吹抜けは高さ約20m。大きな石造暖炉を囲むように、階段やバルコニー、木の柱や手すりが何層にも重なっている。
写真を見ていると、ホテルの中というより、巨大な木造空間に入り込んだように見える。

開業した1904年には、すでに電灯が入っていた。夕食時には弦楽四重奏も演奏されていたという。いま残る静かな歴史写真から想像するより、ずっと賑やかな場所だったようです。
100年を超えて、今も泊まれる
1959年のヘブゲン湖地震では、屋根や煙突が損傷した。1988年には大規模な山火事がオールド・フェイスフル地区まで迫っている。

それでも、修理や補強を重ねながらホテルとして使われ続けてきた。100年以上前の木造建築を見学できるだけでも十分だが、ここは今も宿泊できる。
日本からこのホテルだけを見に行くには、さすがに遠い。せっかくなら、イエローストーンを巡る旅の中で訪れたい。
ホテルを出れば、そこはイエローストーン

オールド・フェイスフルのあるアッパー・ガイザー・ベイスンには、約1平方マイルの範囲におよそ150の熱水現象が集まっている。ホテルを出て、そのまま遊歩道へ。間欠泉や温泉の間を歩いて回ることができます。

少し北へ行けば、イエローストーン最大の温泉、グランド・プリズマティック・スプリングもある。ここまで来ると、オールド・フェイスフル・インだけを見て帰る旅ではない。
100年以上前の建物を見に行く。しかも、そのまま泊まれる。
それだけでも、旅の目的としては十分です。
旅の情報
Yellowstone National Park|Old Faithful Area ↗
写真をもっと見る
海外ギャラリーでは、オールド・フェイスフル・インの外観、ロビー、ログ壁、木造ディテール、歴史写真などを写真中心でまとめています。
主な資料
- National Park Service|Old Faithful Inn
- National Park Service|Explore Old Faithful
- National Park Service|Old Faithful Geyser
- National Historic Landmark nomination|Old Faithful Inn
- American Heritage|Why the Old Faithful Inn Survives
- U.S. Geological Survey|Parkitecture in Yellowstone
- National Park Service|Yellowstone Science: Old Faithful Inn Centennial
- Yellowstone National Park Lodges|Old Faithful Inn
