
世界の木造建築を紹介していますが、調べていると、木の家がなかなか出てこない国もあります。クウェートもそのひとつでした。 ログハウスを探しても出てこない。そもそも国土の大部分が乾燥した土地で、家を建てられるような木が豊富に採れる国ではありません。 じゃあ、何で家をつくっていたんだろう。
壁は、海と土から
昔のクウェートの住宅では、土や石灰、海岸で採れる石やサンゴ石などが使われていました。 身近にあるもので壁をつくる。ここまでは、砂漠の国の家として何となく想像できます。 気になったのは屋根です。 壁なら土や石でつくれても、屋根を架けるには長い材がいる。 そこで、ようやく木が出てきました。 ただ、その木はクウェートの木ではありません。

屋根の木は、海を渡ってきた
古いクウェート建築の資料を見ると、インドからチーク材、東アフリカからマングローブ材や竹を運んでいたことが分かります。 クウェートの家を見ていたはずなのに、木を追うとインドと東アフリカまで行ってしまいました。 昔のクウェートは、真珠採りや海上交易で栄えた町です。 船が運んでいたのは商品だけではなく、家をつくる材料でもありました。
1936年につくられた現在のサドゥ・ハウスには、カラチから運ばれた木製の扉が使われたという記録も残っています。 壁はクウェートの土や石。 扉はカラチ。 屋根を支える木はインドや東アフリカ。 一軒の家をつくる材料が、海を挟んだかなり広い地域から集まっています。 木がたくさんある国の建築を見ていると、木がどこから来たのかなんてあまり気にしません。 クウェートでは、木が少ないからこそ、その一本がどこから来たのかまで見えてきます。

それでも木造住宅はあった
では、クウェートに木造住宅そのものはなかったのか。 ここも少し気になって調べました。 1972年の国連工業開発機関の資料には、当時のクウェートに木製プレハブ住宅を製造する企業が3社あったと記録されています。 森林の少ないクウェートで、木製プレハブ住宅。 材料になる木材のほとんどは輸入です。
伝統住宅では、屋根や扉など必要なところに木を使う。 その後は木材を輸入し、木製住宅そのものもつくるようになった。 クウェートの伝統住宅を木造建築と呼ぶのは難しいです。 でも、「木がない国だから、木とは無縁だった」というわけでもありません。 むしろ木が少ない場所を調べたことで、家をつくるために木がどこまで旅をしていたのかが見えてきました。
